僕が「料理人になりたい」と思ったのは小学校4年生の時。
きっかけは家庭科の授業参観で、キャベツの千切りを披露したことでした。
身体は弱いし成績も悪い、何をやっても落ちこぼれだった僕でしたが、唯一得意だったのが台所仕事でした。その日、僕が披露した千切りは先生や友だちを驚かせ、「クロちゃんすごい!」という称賛の声が集まりました。
あの日のことは、日本とパリで４つの店舗を経営するオーナーシェフとなった今でも、決して忘れることはありません。

僕には「ユニバーサルレストランという概念を日本に広める」という理想があります。
障がいがあろうとなかろうと、自分の得意なことを生かして働ける場所があるということ。「君は君のままでいいよ、大丈夫」と受け入れてくれる場所があるということ。
それはコンプレックスの塊だった少年時代の僕が何より求めていたもの。
僕は、かつての僕のような人たちのために、チャンスを提供したいのです。

そして、そんな多様性を受け入れることは、「福祉のため」という以上に、飲食業界の未来のために大切なことです。
障がいの有無だけではありません。年齢や性別、国籍。子育てや介護による制約。「厳しい長時間労働に耐えられないから」ということを理由に、やる気があるにも関わらず、飲食業界で活躍の場を与えられなかった人はたくさんいます。

僕はそんな常識を塗りかえ、社会のあちこちに居座っている心の垣根を壊してゆくファーストペンギンになりたい。
そして僕たちのレストランを訪れる方々が、これからの豊かさや幸せのヒントを見つけてくださるなら、それに勝る喜びはありません。

フレンチレストラン ル・クログループ
代表取締役 / オーナーシェフ　黒岩 功